裏切られることは最高の楽しみ。―ピエール・ルメートル「その女アレックス」
電子書籍ではなく、紙の本で読みたい本というものがある。装丁がとってもきれいなものとか、そういう本は色々あるけれど、僕にとってミステリ本は間違いなくその中に入る。理由は、これから自分が裏切られることが物理的に証明されるから。ある部分まで読んで、事件の全容が見えたかと思わされる。しかし、ページを押さえる左手の下には、まだまだたくさんのページがある。これからどんな展開が自分を裏切ってくれるのか―その期待感がたまらないのだ。
そういう意味で「その女アレックス」はたまらない。真実の間をなんどもなんども転がされてくような感覚。まるでピンボールのように。
誘拐監禁されたアレックスという女と、その事件を追うパリ市警のストーリーなのだが、謎めいたアレックスというキャラクターに対して、単純明快はっきりしたパリ市警の4人組が対照的で楽しい。チビで皮肉屋のカミーユ、デブで仲介役のル・グエン、金持ちで教養豊富なルイ、貧乏でケチなアルマン。まさに凸凹コンビ(いや、カルテットか)だが、全員極めて有能なのでご心配なく。
起こる事件は気持ちが良いものではないから、4人組が繰り広げるドタバタコメディー・・・とはさすがにいかないが、表紙のおどろおどろしさに比べるともっとライトに、楽しく読める本のはず。
ただし、読むなら徹夜の心構えだけはお忘れなきよう。
「邪悪」は他人事なんかじゃない―M・スコット・ペック「平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学」
文庫 平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学 (草思社文庫)
- 作者: M・スコット・ペック,森英明
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2011/08/05
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タイトルの「平気でうそをつく人たち」のことを、筆者は「邪悪」な人々と呼ぶ。もちろんそこまでいうからにはただの嘘つきのことではない。
彼女持ちの男は総じてモテる―二村ヒトシ「すべてはモテるためである」
彼女持ちの男はモテる。余計ムカつく。
本の話に入ろう。
いろんな書評ブログさんとか見ていると中々評価が良く、気になっていたので「べ、べつにモテたいとかじゃなくてブログのネタに買うんだぞ!」と思いながら購入。
一行目。
なぜモテないかというと、それはあなたがキモチワルイからでしょう。
なぜキモチワルイかというと、自意識過剰だから。臆病な人はネガティブの方に、空気が読めない人はポジティブな方に自意識過剰。どうしてかといえば、自意識過剰だと、人と向き合うことができない。こういう場合に対話しているのは相手ではなく、相手を通した自分だからだ。つまりモテるためにはまず自意識過剰を直さなければならない、と書いてある。
じゃあ、モテるって一体どういうことだ?何のためにモテたいのだろうか?
「モテたい」=「キモチワルくないということを保証されたい」
最初、「すべてはモテるためである」というタイトルが良くわからなかった。「すべて」って本当に全てなの?家に帰って一人寂しくyoutubeの動画を見ながら晩酌するのもモテるためなのか?と。だが、この言葉で腑に落ちた。
承認欲求を満たされることなしに幸せに生きることができる人は少ない。マズローの欲求5段階説によれば、承認欲求の段階をクリアし、自己実現欲求の段階も達成してしまう人は全人口の1%程度で他の99%の人にとっては承認欲求を得ることでいっぱいいっぱい。だから、ほとんど「すべて」の人の人生は、承認欲求のため=モテるため。ちょっと強引かな?
自意識過剰を治すためにはアイデンティティを確立することが大事だと筆者は言うけれど、これはすごく難しい。TV版「エヴァンゲリオン」のラストじゃないけれど、アイデンティティを確立することは承認欲求が少なからず必要なはずだ。だから彼女持ちはモテる。彼女持ちでない人は、モテること以外で承認欲求を得ることが出来たものだけがモテることができる。少なくとも、「すべてはモテるためである」なんてタイトルの本を手にとっちゃうくらいにこじらせてる人にそれが出来るかどうか。……僕?僕の話はいいよ……。
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